...04
マヨネーズ男の言うままについていく。
途中、名前を聞くとマヨネーズ男は真選組の副長の土方十四郎さん、
もう一人の優しそうなお兄さんは隊士の山崎退さんと名乗った。
そして、これから会う人は近藤勲という真選組のトップ、局長さんらしい。
トップの人って、これまで平凡な人生しか歩んでこなかった私は
校長レベルの人としか会ったことなかったのだけれど、
まさか警察のトップの人にいきなり対面することになるとは。
少し緊張しながら歩いていると、土方さんはある襖の前で立ち止まり「ここだ」と言った。
「近藤さん、例の女を連れて来た。入るぞ」
「お、女?なにっ!?ちょ、ちょっと待って!」
中から少し動揺した声が聞こえる。
もしかしてこれがトップの人なのだろうか。
ちょっと校長よりも威厳がないんじゃないか。
しかも土方さんは無視して襖を開けた。
そこに現れたのはアルバムを広げて写真を整理してる男だった。
「まーた何してんだあんた」
「ちょっとお妙さんメモリアルを整理していたとこでな!!」
そう言うとその男は慌ててアルバムを棚の上に置いた。
そこで私にはじめて気づき、コホンと咳払いをし姿勢を正した。
それを見て土方さんはため息をつき、「入れ」と言って私を中に入れる。
あとから二人もついてきた。
とりあえず近藤さんの前にここでいいのか不安な気持ちで正座する。
二人は私に向かうように座った。
近藤さんはじっと見つめ、何か観察するようにこっちを見ていた。
しばしの間、沈黙が続くと近藤さんは口を開いた。
「はじめまして。私は真選組局長近藤勲と申します!」
「は、はじめまして!えっと、私はといいます」
目を泳がせながら名前を言う。
近藤さんはそれに気づいたらしく、にっこりと微笑んだ。
「そんなに固くならなくていいですよ。こいつから話は聞きました。
大変でしたね!いやあちょうどいいところに二人がいたもんだ!」
「近藤さん、」
何か焦るように土方さんが言う。
「あ?あ!いやあ、ハハ。まあとりあえずですね、さん、あなたはしばらくの間ここに住んでもらおうと考えています」
「住む・・・?」
「住居や後ろ盾がなくこの国についてあなたを一人置いておくのはとても危険。
安心してください、ここは警察です。あなたを命かけてお守り致しましょう」
「守る?」
「ええ。この国では天人に対してあまりよく思ってない連中がおりましてな」
話が進みすぎてついていけなくなる。
彼らを信じれるほどよく知らない。
警察といってもこの国自体を信じていない。
でも、どうやら私には選択肢がないようで。
「ありがとうございます。よろしく、お願いします」
その後山崎さんに案内され、与えられた私の部屋に入る。
聞くと役職を与えられた人にしか個室はないらしく、
居候の身となるのに、性別に甘えてしまって悪いなと思った。
「着替えや寝るときなどは厳重にロックしてください」
「はい」
「隣の部屋は局長、反対側は副長の部屋です。何かあればいつでも二人を呼んでください。
雑務などは女中さんにお願いしてください」
事務的な説明を終えると、これで終わり、と山崎さんは言った。
私がお礼を言うと山崎さんは笑う。
「不思議ですね」
「え?」
「もし俺が知らない星に来てしまったら。いきなり知らない人の元に住むとしたら。
もっと動揺すると思うんですが、さんはとても落ち着いている」
私も笑い返す。
「自分ではよくわかりませんが、どこかで理解してしまったんだと思います」
「理解?」
「・・・もう帰れないこと」
そう言うと、山崎さんは目を少し大きくするが、すぐにまた元に戻り微笑んだ。
「大丈夫です。局長も言ってたように、いつかきっと帰れますよ」
「だといいですけど」
「大丈夫です。夜は局長から他の隊士にさんを紹介するそうです。では俺は戻りますんで」
山崎さんは部屋から出て行った。
時計を見る。
時はお昼過ぎ。
朝からまだ半日も経ってないことに気づく。
未だにこの流れについていけていない。
早く乗らなきゃだめだ。
でも、この違和感はなんだろう。
ここの人はどこかよそよそしい。
2009-03-10