...14
「おーい、神楽。今日お前家にいろよー」
「なんでヨ。置いてけぼりはいやネ!」
「今日はちょっと、その・・・神楽ちゃんは入れないところにいくんだよ」
「男同士で何する気アルか!おまえらそういう趣味だったのか!?」
「ちげーよ。浮気調査の続きでボーイのバイトすんの」
「客でキャバクラにいったら依頼料ふっとぶからね」
「昼に行くのか?」
「おまえかぶき町なめんなよ。昼キャバなんてたくさんあるよ。昼は若い子多いんだぜ」
「どうして知ってんですか」
「じゃあ私キャバ嬢になるネ!最初はこんな感じネ!すいませーん、新人の神楽でーす、キャハッ!」
「行くぞー新八ィ」
「じゃ、神楽ちゃん留守番よろしくネ」
神楽が妄想でナンバーワンになる頃には二人はもう出てった後でため息をついてドカッとソファに座る。
定春はまだ起きてない。
「ハア・・・暇ネ・・・イタッ」
ゴロンと転がるとおでこにソファの腕置きに置いてあった銀時のジャンプに当たった。
ふと、少し前に書店で会った女の子のことを思い出す。
少し年上で、託児所の先生で、よく笑う・・・。
名前が出てくる前に神楽は立ち上がり、勢いよく部屋から出て行った。
「たのもーう!」
「だから中に入っちゃだめだから!お兄さんにお名前と用件を言ってって」
「お兄さんじゃなくておっさんだろ」
「・・・」
「おし」
「ちょっと!」
門番の人が目の粒をこらえているうちに、神楽は屯所の中へ走っていった。
「先生ー!先生はどこアルかー!」
「なんでてめえがここにいんでィ」
「先生ー先生はどこアルかー」
「はい逮捕ー」
沖田はバズーカを取り出して神楽に向かって打つが、軽々と避ける。
「食券乱用ネ!私が何したアルか!」
神楽も対抗して番傘で沖田に向かって発砲し、沖田は飛んだ。
「ちょっとー!山崎さんいじめるならあっちでやってー」
「いや俺いまここで勉強してるからね」
少し遠くから聞き慣れた声がして沖田はそちらを見る。
会議室の窓からが叫んでいる。
隙アリと殴りかかる神楽を見て、その方向を指差す。
「おい、あれ探してんだろィ」
「ん?」
「はいチャーンス」
その瞬間、沖田は神楽に蹴りをいれた。
神楽はその場に倒れ込んだ。
「グフッ」
「おーい 、こいつがお前探してるそうだー」
「ちょ!その子山崎じゃないじゃん!女の子じゃん!死ぬって!」
「だからおかしいよね。俺いま勉強教えてもらってたよね。しかも呼び捨て」
「大丈夫でさァ。こいつは何回殺しても死にやしねェ」
沖田の言うとおり、神楽はすぐにむくっと起きた。
「なにすんだクソガキィィィィイイ!」
そして沖田の足に頭突きをした。
「いっでええええ!」
「あ、総一郎が悶えてる!あんなとこ初めて見た!すごい!なにあの子!」
「あれは万事屋の・・・」
は歓喜の声をあげて身を乗り出して「沖田をやっちまえー!」と神楽を応援する。
その声に神楽は反応し、を見てうれしそう顔を明るくする。
「!先生!」
「ん?わたし?」
「え、ちゃん知り合いだったの?」
「誰だっけ・・・」
近づいてくる神楽をよく見ようとは目を細めた。
「あ!本屋の!」
「名前忘れたアルか!私はちゃんと覚えてたネ!」
「ごめんごめん。なんだっけ?」
「神楽ヨ。ひどいネ!今日はの手伝いしにきたのに!」
「手伝い?」
「旦那はどうしたの?」
「銀ちゃんたちならキャバクラ遊びにいったネ」
「うわ、真昼間から!どこの星も変わらないんだねー」
「そうネ、どこの星の男もみんなケダモノよ」
「だよねー!私が前の星にいた頃なんてさ、」
二人がダメ男談義を始めて、山崎他数名の隊士はいたたまれない気持ちになる。
ふと山崎が窓の外を見ると、恐ろしいものが目に入る。
「ー・・・てめェ今なんて言ったんでィ」
「え?金で愛は買えないって・・・キャアアアア」
「もっと前でさァ」
沖田はに向かってバズーカを発射した。
会議室は吹っ飛んだ。
「もうほんと最悪!会議室直るまで使えないなんて!謝ってよ総一郎!」
「ほんとネ!私にも謝るネ!」
「嫌だねィ。誰が謝るかィ」
「ハッハッハ!いいじゃないか、局長室なんてなかなか使えないぞ!」
「笑ってる場合じゃねえぞ、修理代いくらかかると思ってんだ」
「はーあ。あそこ臭いからできるだけ入らないようにしてたのに」
「マジでか」
「ちゃんんんん!?」
「申し訳ねェ、このとおりだ」
「総悟オオオオオオ?!!謝らないんじゃなかったの?ねえ?なんで土下座してるの?」
泣き喚く近藤の隣で土方はため息をついた。
「神楽ちゃん、夜ご飯食べてかない?」
「ホントか!でも銀ちゃんが心配するネ。先生の授業も見れたし今日はもう帰るヨ」
「見てたっけ?」
「ふふん。ケダモノたちをいかに手なずけるか学ばせてもらったヨ!」
「えっ、私手なずけてる?どこが?」
は神楽の背に合わせてしゃがみ、声を小さくする。
神楽もそれに合わせる。
「もうバッチリネ!みんなにメロメロね!」
「え、うっそォ。そんなつもりないんだけどォ★まあテクは鍛えてるかなあ。アハ★」
「マジでか!私教えてほしいネ!そんでうちの男共を下僕にしたいネ!ポジションはなんとなくわかったけど、秘訣は何アルか?」
「秘訣!?え、え〜と、そうだな。JKブランドみたいな」
「じぇーけえ?」
「あのね、私がいた星ではね女子高生っていうブランドが、」
「なにこそこそ話してんのー?」
が必死に考えた秘訣を言おうとしたとき、屯所では聞きなれない声が間に入る。
二人が見ると、銀髪の男がめんどくさそーな顔をして立っていた。
「銀ちゃん!」
神楽がうれしそうに顔をあげ、「どうしてここがわかったアルか?」と銀時の腕にぶら下がる。
「定春にお前の匂いのあと追ってきてもらったんだよ。神楽、おまえ定春にえさやらずに行ったろ」
「あ!忘れてた!」
「部屋すごいことになってたんだからな。今新八が片付けてるから。お前家事増やされた新八こえーの知ってんだろーが」
「おお!だからわざわざ迎えに来たアルね!」
銀時はを見る。さっき二人で話していたときの神楽の表情。
あんな表情、滅多に家では見せねえなと銀時は笑う。
女同士で話すときの特有の表情。
彼女らにはわからないけれど、男から見るとそれはものすごく輝いてみえるものだ。
「悪かったな、センセー。世話の焼ける幼稚園児を一人増やしちまって」
「あはは。神楽ちゃんとは先生じゃないよ、友達だもん」
「友達・・・!?」
その響きに神楽は顔を輝かせる。それを見て銀時も優しい表情を見せる。
そんな二人を見て、食堂にいる隊士たちをふと思い出す。
「今度は私が遊びに行くね、神楽ちゃん」
「うん!そのときはじぇーけーについて詳しく聞くアルヨ」
「なんだそのJKって。冗談は顔だけにしろの略か?」
「秘密ネ!ね!」
「ねー!」
親子のように仲つむまじく帰っていく二人をは手を振って見送った。
もう暗くなり星が出ている空を見上げる。
あんな風に女の子と話したの、久しぶりだなあ。
女中さんで若い子、入らないかなー。
少し冷えた空に向かって体を伸ばす。
「 、風邪引くぜィ」
とつぜん肩に上着が乗せられる。振り向くと、沖田が立っていた。
はありがとうと微笑む。
「行くぜィ」
それに返さず、沖田は背中を向けてすたすたと歩き始めた。
「迎えに来てくれたの?ありが・・・ナニコレ!クサッ!」
「それは近藤さんのでィ。ちなみに近藤さんは隊服をクリーニングに出したことは一度もねェ」
「なんか頭がくらくらしてきた・・・」
は背中を見て心の中で笑ってると想像する。
その想像につられて笑い、沖田が無愛想な表情で振り向き「何笑ってんでィ」と言った。
ま。悪くないな、同じ年くらいの男の子も。
2009-03-25