染まるよ



...19



浮かれる神楽には銀時の社長椅子に座らされる。
もうれしそうにくるくると椅子を回転させて、新八はほほえましそうにそんな二人を見ていた。
銀時はソファに寝転がりながら誰かと電話をしている。

「いい町だね」

は窓から外を見た。かぶき町の空は広かった。
神楽はその言葉にうれしそうに頷いた。

「あそこが駄菓子屋の屋根ネ!巣昆布あそこで買うヨ。で、あそこは佐藤さんちアル。ほいでその隣が鈴木さんち」
「神楽ちゃん、そんなローカルすぎる情報言ってもわからないと思うよ」

新八が苦笑して言うと は笑った。すると神楽が「つまんなかったアルか?」と顔を覗き込む。
は答えにくそうに首を傾げた。

「うーん、佐藤さんはどんな人なの?」
「ガンコじじいネ!奥さんといっつも喧嘩してるヨ」
「ほーんとあの夫婦昼夜関係なくてよ、節操ねえったら」

いつの間にか電話を終えた銀時が話に入ってきた。
新八もこの前の喧嘩の原因を言い、4人は笑った。
はもう一度外を見た。三人の話は鈴木さんに移っていた。
風がそよそよと吹く。町の建物も、それに答えているように見えた。
その中でもひとつだけ、まっすぐにターミナルは立っていた。
それだけは従順とも抵抗ともとれない表情で立っていた。

どうして自分はこんなに不器用なんだろうと思った。
そんなこと気にせずに、天人として攘夷志士を卑下し彼らに護ってもらえばいい話なのだ。
でもどうしてもここは がいた星と似すぎて、天人にはなりきれなかった。

「・・・うん、いい町だ」
もここに住むといいネ!」
「そうだね、そーしよっかなあー」

は笑った。

屯所は静かだった。
集会で突然告げられたの不在に隊士たちは落胆した。

「なんでちゃん何も言わずに休みなんて・・・」
「ほんとだよ、なにがあったんだか」
「おまえらわかんないの?まったくどいつもこいつもー」
「山崎さん何か知ってるんですか?!」
「ふつうなんとなくわかるもんでしょーが」

隊士たちに問いに答えることなく、山崎は集会所から出た。
向かう先は土方の部屋だった。

「山崎ー」

原田の声だった。名前を呼ばれた方を見ると、中庭で原田が煙草をふかしていた。

「おまえなんでちゃんが休み取ったか知ってるかー?」

能天気なその質問に、山崎は少し苛立った。
口を開こうとすると、原田が先に言った。

「俺よー、なんか昨日悪夢にうなされてよ」

山崎は首を傾げた。

「悪夢?」
「おう、ちゃんが帰るんだよ、突然」
「・・・ふうん」

山崎は縁側に座った。

「朝起きたら汗ダラダラでよ、思ったんだ、これ悪夢なのかって」
「・・・・・」
ちゃんが一番望んでることなのにな。まだちょっとしかここにいねぇのに、もう考えられねえんだよ」

山崎は苦笑した。

「そんなの俺だって同じだよ、原田」



窓から夕日が差し込む。
と神楽はソファで仲良くうたた寝をしていた。
銀時はふああとあくびをしてからジャンプを閉じた。

「はいはい起きろー行くぞー準備しろー」
「んん?」
「なんですか突然」
「どこ行くネ?」
「どこって新八んちだよ、今日泊まるって言わなかったけか?」
「聞いてませんよ!」
「姉御んちお泊りか!?キャッホイ!」
「姉御って?」
「新八の姉ちゃんネ。、準備するヨロシ!」

玄関に置きっぱなしの荷物をは取りに行く。
部屋に戻ろうとすると、厠に入ろうとする銀時と目があった。
はニコッと笑い、頭を下げた。

「銀さん、お世話になります」
「いいから、それ」
「え?」

は顔をあげ、キョトンとした顔で銀時を見る。

「慣れねえ作り笑いしてもしんどいだろ、休暇取ってきてんだからよ」

パタンと厠の扉が閉まる。
はポカンとして扉を見つめた。
そして笑い、もう一度頭を下げた。

「お世話になります!」



2009-04-26

お泊りはきっちりしてる銀さんが好きです。