染まるよ



...20



新八の家では初めて噂で聞いていたオタエサンに対面した。
あまりよくなかったイメージはすぐに変わった。
暴力をふるうとは思えないほどにおしとやかで思わずは本当にその人か聞いた。
新八たちは笑い、今までのできごとをに話し始めた。
銀時と新八、神楽、お妙の出会い。
お妙さんと近藤さんの出会い。
真選組との切っても切れない腐れ縁。

「れんごくかん?」
「ま、あまりいい思い出じゃねーな」
「真選組との縁が強くなったのはあの時でしょうね。そういえば、正義の味方の沖田さんはあれ以来見ていませんね」
「ええ、総一郎が正義の味方?」

新八と神楽は競って話し始めた。
役人が手を回す人切り見世小屋・煉獄関。万事屋に一度は頼んだものの、最後は真選組も御用改めをした、と。
話し終わる頃には、の目からは自然と涙が出ていた。

「ど、どーしたんですかさん!感動しちゃったみたいですよ、銀さんって寝るなー!」
「ぐーすかぴー」
、大丈夫か?」
「う、うん。なんか、違うの、なんか」

首を振るに、三人は顔を見合わせる。

の涙は、確かに感動という類のものではなかった。
総悟の正義を初めて知った瞬間だった。


は知らなかった。
いや、わかっているフリをしていただけなのかもしれない。
彼らも立ってる位置は幕府の人間であることには変わらない。
だけど、絶対に間違いに屈さないくらいの、本当に国を思う気持ちがあるからこそ。

いつかの近藤の言葉を思い出す。
俺たちは俺たちの剣を護るために真選組を名乗っているだけと悩んだときがあると。

この国はいま、外からも中からも正義を通している人がいる。
いつか、いつか、彼らの望む世界になることをは顔をくしゃくしゃにして祈った。



夜、それぞれが寝静まった頃、は縁側に座り月を見ていた。
自分の星と同じくらいきれいな月だった。

やわらかな物音がして振り向くと、銀時が酒瓶を持って立っていた。
にやりと笑って「酌してくれよ」と言いの隣に座った。
は酒瓶を受け取り、ゆっくりと銀時のお猪口に注ぐ。
注ぎきるとはそのお猪口を銀時の手から奪いとり、ぐいっと口の中に流し込んだ。

「あ、てめっ」
「ぷはー」
「ぷはーじゃねーよまったくもー。俺は酌してくれって頼んだんだけどー」

はケラケラと笑った。
昼に見たときよりも、すっきりとした表情に銀時も優しく笑った。

「私がいた星と似ているもんだから、つい神経質になっちゃって」

は困ったように笑った。
そして片手でお猪口に酒を注ぐ。

「銀さん、お願いがあるんです」
「んあ?」

差し出されたそれを受け取り、銀時も一口飲む。

「私、帰らなきゃ。だから、手がかりを見つけないと」

お願いしますと下がるの頭。
銀時はそれをわしゃっと撫でるように掴んで、自身の瞳を見つめさせた。

「万事屋銀さんにまっかせなさーい」

また、涙が出そうになった。



2009-05-01

銀さんにとって煉獄関の思い出は美談ではないと思います。だから寝た!